これから読む人の為の萩尾望都

2010年最後の更新は、昔取った杵柄で大変恐縮ではございますが、私が学部から大学院で専攻して研究しておりました、少女マンガの表現のパイオニア・花の24年組の一人、萩尾望都の作品について、つらつらと書いていこうと思います。
昨年デビュー40周年を迎えた萩尾氏は、当然ながら非常に多くの作品を発表しています。
中には、高く評価されているもののクセが強く読みにくい作品、あまり注目はされていないけれども非常に面白く注目に価する作品などもあるわけです。
今回は、「とりあえず話に聞いたことはあるけど、どれから手を付けたらいいのか分からない」という方に向けて入手しやすく、導入として取っ付き易い作品を収録した文庫版を紹介していきます。

まず、萩尾望都をご存じない方の為に軽く説明しましょう。
彼女は今現在書店に並んでいる少女マンガの基本的なスタイル――内語と呼ばれるモノローグを用いてキャラクターの内面を描く手法や、キャラクターの心象や場の雰囲気を茫漠としたイメージの積み重ねで描くコラージュ的な手法――を確立した”花の24年組”と呼ばれる少女マンガ家グループの一人です。
1969年にデビューし、竹宮惠子、大島弓子ら”24年組”作家陣と共に、マンガというメディアの芸術性を追求していきました。
彼女の作品は、1960年代から続くカウンターカルチャーブームに乗り、少女だけでなく、大人の男性にも受容され、読み物としてのマンガの可能性を切り開きました。
作品リストや、詳しい人となりなどはWikipediaの項目をご参照下さい。概論的な情報は掲載されています。

『11人いる!』小学館文庫
1975年発表のSF中編作品です。
宇宙が開拓され、数多の惑星の間で盛んに交流が持たれるようになった未来が舞台で、宇宙に羽ばたく人材となるための養成学校の入学試験を舞台として物語が展開します。
入学試験の最終選考は、宇宙空間に投棄された宇宙船の中、10人1組のチームで53日間生き延びる、というものでした。しかし、実際に宇宙船の中には11人いて……と、始めからトラブルを抱えた状態で試験が開始されます。
一癖も二癖もあるチームメンバー同士の衝突や、宇宙船内で発生する様々なトラブルを通してキャラクターの心情が描かれるのですが、それぞれのキャラクターに魅力があって非常に惹きつけられます。
特に両性具有者・フロルが、始めは男としてツッパった態度を取るのですが、徐々に女の子を志向して行く姿はキュンと来ます。フロルかわいいよフロル。
また、萩尾氏の作品によく描かれる「自分は何者か」というテーマも、重く暗くなりすぎず適度な気楽さを以て描かれている為、萩尾作品のエッセンスを楽しむには最適の一冊です。
文庫内には、表題作と後日談、番外編的なショートショートコメディが収録されています。

『この娘うります!』白泉社文庫
1975年発表の中編ラブコメディで、文庫版には’72~’74年に発表されたスラップスティックコメディ短編5編と共に収録されています。
物語としては、ひょんなことからファッションモデル見習いにスカウトされた箱入り娘・ドミニクが、ファッションスクールやショウビズ界の人々と出会い、交流することで恋をし、親離れをする、という非常にありがちな女の子の成長物語となっています。
ですが、衣装を着替えるように(実際に様々な衣装に着替えて)様々な”自分”を取っ換え引っ換えする中から、本当に自分がしたいこと、納得出来る”本当の自分”を見つけていく主人公の姿は胸を打ちます。
また、主人公だけでなく、主人公のパートナーとなる少年や、主人公の憧れの君が抱える社会と自分との間に横たわる溝が、本当に衣装の変化によって埋められていく様子は物語作りの巧みさ、小道具の利用の上手さを感じさせます。
表題作以外の収録作品は、非常に明るく軽やかな学園モノが多く、これらもまた読みやすい作品です。少女マンガ的な楽しさを味わいたい方にお勧めです。

『半神』小学館文庫
1980年代のSF短編を中心とした短篇集。
先に挙げた2冊とは毛色が変わって、シリアスな作品が中心となっています。
萩尾氏の代表作『トーマの心臓』、『ポーの一族』と比べると、コマ割りやモノローグの構成の面で、いわゆる少女マンガとして思い浮かべるであろう、折り重なった重層的な画面表現が少なく、どちらかというと青年マンガに近い整然と割られたコマ割や多すぎない台詞運びで、読み易い作品が多いので比較的親しみ易いと思います。
表題作「半神」はわずか16ページの掌編ではありますが、シャム双生児というギミックを巧みに用い、離れたくても離れがたく長年憎んでいた妹に自分が成り代わり、自分の存在の同一性が分からなくなる、という非常に恐ろしい感覚を抉り出します。
収録作品の中で私の個人的なお気に入りは「真夏の夜の惑星」です。
お互いがお互いのことを羨ましいと思い、自分の気持ちに素直になれない大人たちが追い詰められた状況下でようやくお互いを理解し合い、再出発を図る姿が非常に清々しい作品です。
また、収録作品は80年代の物が中心となっているのですが、同著に収録されている75年発表の「温室」との作風の違いを楽しむのもいいかもしれません。
テーマ重視で、萩尾氏の哲学に触れたい方にお勧めします。

お付き合いいただきありがとうございます。
多少なりとも萩尾作品に興味を持っていただけましたら幸いです。
それでは皆様、良いお年をお迎えください。
2011年も、ごういんまいうぇいさぶかるちゃーをよろしくお願い致します。

Tags:

One Response to “これから読む人の為の萩尾望都”

  1. Tweets that mention 【ブログ更新】これから読む人の為の萩尾望都  -- Topsy.com Says:

    […] This post was mentioned on Twitter by ミモリ ナチヲ. ミモリ ナチヲ said: RT @rygullickson: 【ブログ更新】これから読む人の為の萩尾望都 http://gmwsc.net/?p=413  少女マンガを読むのも初めて!と […]

Leave a Reply